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2008-09-12

廃線・廃墟・美術展-所沢ビエンナーレ・プレ美術展「引込線」

P1050361.jpg 所沢駅の近くに廃線跡がある、と言ったら信じない人もいるだろう。しかも、撤去されたのは、わずか2年前だ。

 所沢駅西口、広大なワルツ駐車場の背後にある西武鉄道所沢車両工場は2000年には閉鎖されたが、ここに工場に車両を出入りさせるための引込線があった。2006年に撤去されるまで、ワルツの裏手の踏切脇から本線と分岐して、この工場まで続いていた。

 しかし、工場跡地の敷地外こそ撤去されたものの、引込線は敷地内にいまだ残り、無数のポイントで交差しながら、廃墟となった工場内に引き込まれている。

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 この「引込線」をタイトルにした美術展が、8月27日から今日まで、この工場跡地で開催された。所沢市にゆかりのある美術作家たちによる「所沢ビエンナーレ・プレ美術展」だ。

 「ビエンナーレ」とは、イタリア語で2年に一度開かれる美術展覧会のこと。来年以降、所沢近郊の作家が中心となり、地域に根ざした自主企画展を開催すべく、今回はその準備展のようなスタンスでの開催だという。

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 『武蔵野美大ニュース5月号』によれば、この企画、そもそもの起こりは所沢の飲み屋での作家たちの美術談義からはじまったという。そこで、商業主義、ポピュリズムに陥った近年の美術状況を憂い、70年代に多く開かれた自主企画展の原点に立ち戻ろうというような気炎を上げたそうだ。そして、所沢という地域に根ざした企画を開催していくことが確認されたのだという。そうして紆余曲折はあったものの、市や教育委員会、西武鉄道などの協力を得て、この場所での開催がかなったという。

P1050338.jpg 工場跡でアート、そしてタイトルは「引込線」・・・いかにも興味をそそるコンセプトに誘われ、最終日の1日前に出かけてみた。

 まず圧倒されたのは、作品そのものよりも、やはり「ハコ」の大きさ、存在感。そして、当然のことながら一切の装飾を廃し、必要性のみに純化されたリアリズム。会場自体、ある意味ひとつのアートと言ってよいかもしれない。

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 今ひとつ、美術は門外漢なので、作品そのものの評価はしがたいが、いわゆる「アート」とはかけ離れ、より一般に身近な「労働」の場で開かれた意味は、それなりに感じることができた。こういうスタイルを「オフ・ミュージアム」と言うそうだが、確かに気取った美術館で肩肘張って見るより、よりリラックスして作品そのものを感じることができた。

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 何より、美術鑑賞より「ちい散歩」の方が似合いそうなおばちゃんたちがせっせと写真を撮り、昼休みとおぼしきニッカボッカ・スタイルの建設労働者が楊枝をシーシー言わせながら鑑賞している姿は、ある程度企画意図が当たった証明と言えるだろう。

 ただし、いかんせん、ハコの存在感に作品が負けてしまっている感も否めなくはなかった。また、ハコを生かし切れていたかどうか、少々疑問が残る。個人的には、戸谷成雄氏の「ミニマルバロック『双影景』」が見せる荒涼感、寂寥感が、この元工場とマッチしていて、気に入ったのだが。

 ただ、こんなに近所にありながら、何十年も入る機会がなかった場所に入ることができたという一点だけでも、「地域に根ざした企画」という意味では、成功なのではないだろうか。ニューヨークのマンハッタン島南部、廃業した倉庫街が芸術の拠点として復活したように、この広大な工場跡に、気鋭のアーティストが集まってきたら・・・などと、想像が膨らむだけでも楽しい。西武グループに、それだけの度量があれば、の話だが。
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 本番である来年、今度はどのようなロケーションで、どんな企画を打ち出してくれるのか、期待したい。

■所沢ビエンナーレ
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2008-08-12

凛と張りつめて-能面美術館

 東川沿いも西新井に入ると、雰囲気が一変する。春の名所である桜並木も、ここばかりは木陰も濃く、一層風情が増す。

 そんな西新井地区のちょうど中心あたり、千歳橋の端に能面美術館がある。幕末期に建てられたという威風堂々たる長屋門に、重厚な銘木の看板が目を惹く。
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 この美術館を運営するのは、能面作家の福山元誠さん。福山さんは、工房としてここで作品を創りながら、その一部を展示している。2001年4月、能面の普及のために開館したそうだ。

 能面は、これまた長屋門に負けぬ堂々たる母屋で展示されている。玄関を入って左手、元は土間であったろう空間の壁一面に20点ほど。さらに、玄関右手の大座敷の奥にも、十数点ほどが飾られている。
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 一般に能面というと、いわゆる「女面」を思い浮かべるが、展示された作品を見ると、実に多彩な面があること、そして、その一つひとつの表情が実に豊かであることがわかる。

 「幽玄」と表現すればよいのだろうか。絶対に生身の顔ではないことは頭でわかっているのだが、自分の中の何かが妙に反応してしまう。そして、怒るでもなく、笑うでもなく、積極的な「意味」を打ち出さない微妙な表情が、見る者の心をざわつかせる。

 その一方で、狂言面のユーモラスな表情には、ほっと心救われる素朴さがある。面の一つひとつに解説も付いていて、「空吹<うそぶき>」と題されたひょっとこ面には、「お神楽の『火男』がなまって?ひょっとこ?となった」などと書かれてあり、興味を惹く。

 福山さんが、つてあって、この古い長屋門のお宅に移ってきたのは10年ほど前。家主からお借りするとともに、建物や所蔵品の管理も任されているそうだ。所蔵品は、以前このお宅で使われていた糸車鉄瓶行灯などで、一般には公開していないが、団体客や地元小学生の地域学習など特別の時に「鉄びん横町資料館」として公開されているという。「鉄びん横町」の由来は、別稿を参照されたい。
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 また、美術館では展示のほか、月に2回、開館と同じ日に能面教室を開催している。カリキュラムは、小面<こおもて>・<おきな>・増女<ぞうおんな>・中将<ちゅうじょう>・般若<はんにゃ>という5面。素人でも、おおよそ1年に2面程度ができあがるという。そのほかにも、北原町や新宿、川越などでも教室を持っているそうだ。

 古民家の凛とした空気に包まれて、古典芸能の世界を堪能する。なかなか張りつめた一時が過ごせる場所である。
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■能面博物館
■福山元誠さんインタビュー(『月刊武州路』より)

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2008-07-08

ゆる~く学習-柳瀬歴史民俗資料館

国道463号線を東へ抜けると、所沢もめっきり田舎めく。
特に、日比田交差点を右折した間道沿いは、会社の倉庫や作業場も並ぶ中にも、古い農村を感じさせる。
この道は、清瀬方面へ抜けたい者が、ラッシュ時の亀ヶ谷交差点を避けるショートカットでもある。

そんな畑の中にポツンと、木造平屋建ての柳瀬歴史民俗資料館がある。

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この一帯、すなわちいまの所沢市下でも、坂之下、城、南永井、亀ヶ谷、日比田、本郷、東所沢、そして東所沢和田の一部は、以前は柳瀬村という独立した自治体であった。それが1955年(昭和35年)、いわゆる「昭和の大合併」で、三ヶ島村とともに所沢市へ編入され消滅したという。1955年と言えば、私が生まれる前とは言え、つい最近のことだ。

そんな旧柳瀬村の歴史と、往事の生活を偲ぶ所蔵品を展示したのが、この資料館だ。収蔵品は、もともと地域住民が柳瀬小学校に寄贈したもので、地域の歴史学習などの授業で活用されていたらしい。それを、現在の場所に移設し、一般への公開するようになったという。

入口でスリッパに履き替えると、脇の事務所から係りのおじいさんが出てきて、電気をつけてくれた。入場は無料なので申し訳なく、せめてもと記帳する。記帳者はもちろん市内が多いが、都内から訪れている方もいるようだ。

資料館の運営は柳瀬地区長会によるものらしいので、系統立てた展示もなく、視覚的に訴えるものでもないが、その分、雑多に並べられた品々が手作りを感じさせて親しみやすい。

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所蔵品でも、やはりボリュームがあるのは、昔の農機具の数々だ。特に、堆肥籠や脱穀機のたぐいなど、麦作に使ったものが多く、米の取れなかったこの地域の風土を感じさせる。

また、地域住民の寄贈とあって、明治から戦前にかけての、この種の博物館としては比較的新しい所蔵品が多いのも特徴だ。「くろがね」と印されたネームプレートがイケてるオート三輪が目を惹く。ごつい窓枠が時代を感じさせるし、かわいく横にピョコッと飛び出ているのは、おそらくウインカーなのだろう。纏<まとい>や法被<はっぴ>、発電器を大八車に乗っけたような放水ポンプからは、村の若衆のかけ声が聞こえてきそうだ。

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帰り際、「おじゃましました」と声をかけると、おじいさんはわざわざ奥から出てきて「ありがとうございました」と言ってくれた。自宅から目と鼻の先で、このテンポ感はなかなか得難い。

交通手段は東所沢駅または所沢駅からバスで、どちらも「柳瀬小学校」で下車、徒歩5分だそうだ。クルマの場合は、資料館に向かって右脇にちょっとした駐車スペースがある。

毎日開館しているわけではないので、行かれる方は必ず資料館のサイトで確認されてから行かれたい。

■昭和初期のころの柳瀬の地図(所沢市立柳瀬小学校サイト内)
■柳瀬歴史民俗資料館

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